学生時代に興味を抱いた検査業務に日々取り組む (篠木テクニカルスタッフⅡ)
BRC は、さまざまな業務に携わる職員に支えられています。BRC を構成する 12 の研究室の職員に、研究室での活動や日々の取組などについてインタビューしました。
今回お話しいただくのは、マウス表現型解析技術室でテクニカルスタッフⅡを務める、篠木晶子さん。
「実験ができる仕事」を目指して国家資格を取得。リソースや関連技術・知識の学びにも積極的な篠木さんに、仕事への取り組み方、やりがいなどについてうかがいました。
念願の「実験ができる仕事」につくまで チャンスをつかむための情報収集
検査技師になりたいと思ったのは、実験や検査道具に昔から惹かれていたからでした。小・中学生時代、理科の時間の実験は本当に楽しかったです。学研の学習誌『科学』の付録にも夢中でした。実験のできる仕事につきたいと考えたのですが、実家が田舎なこともあり職種がかなり限られていました。いろいろと調べて地元の病院にも臨床検査技師という実験を主とする仕事があると知り、専門の学校で学んで東京の検査センターに就職しました。しかし、いざ入ってみると検査技師は少数体制で、学生時代に興味を持った遺伝子検査を行える部門につくのは厳しい現実がありました。
そんなとき、理化学研究所の別部署の求人があったので応募したところ、面接で私の希望を聞いた当時のリーダーから今回の業務はミスマッチだからと派遣会社への登録を勧められました。その後、学生時代に習得した技術を使った遺伝子変異の検出業務の募集があり、派遣社員として入所しました。病院の検査は外注が増え病院勤務の臨床検査技師は数がいらなくなる、と学生時代も実習先の病院でも言われていたので、資格を評価していただいた採用に、「やっていてよかったんだ」と本当に嬉しかったです。
情報収集や人に相談をすることで自分の気持ちを整理して、ここぞというチャンスが来たときに行動に移すことができました。行動を起こすことで人との出会いが生まれ、他の人と違うルートでも夢を叶えることができたのかもしれません。
マウス検査を通して国内外の医療研究を支える 集中力を引き出す「コキア」のおまじない
![篠木晶子テクニカルスタッフⅡ 写真2](https://web.brc.riken.jp/ja/wp-content/uploads/diversity/jmc24_02.png)
所属しているマウス表現型解析技術室では、突然変異マウスや遺伝子改変マウス系統の表現型解析を実施しています。この解析はマウスリソースの付加価値を向上させ、リソース整備や知的基盤整備に寄与するものです。また、IMPCに参画し、マウス表現型解析整備事業に関して国際的にも貢献しています。
私は、遺伝子改変マウスを対象とした表現型解析のための検査を担当しています。入所から2018年くらいまでは、PCRを使ったジェノタイピング(※1)検査を行っていました。また、学生のとき、卒業研究で取り組んだTaqManプローブ法(※2)という検査があるのですが、それを使ってマウスの系統を調べていました。
現在は血液チームに移動し、血液などを採取して科学的な分析を行い、変異遺伝子による体内の変化を調べています。チームのメンバーは3人で、普段の業務は1~3人でマウスの採血をしたり、サンプルを調製し機器で測定したり、パソコンに向かったりと、デスクワークを中心に行っています。
検査数はその時々で異なります。私は数が多いときも正確に速くこなすことに喜びを見出すタイプなのか、それほど苦にはなりません。それでも特に検査数が多いときなど、私が自分を奮い立たせるときに思い出す言葉に、「目は臆病、手は鬼」というものがあります。これは「やらなければならないことが山のようになっている光景を目にして怖気づいてしまっても、手を動かせばどうにかやり切ることができる」といった意味です。
テレビのニュースでひたち海浜公園のコキアの丘が、約2週間かけて32,000本のコキアの苗を手作業で一本一本植え付けていくと聞いたときもこの言葉が浮かびました。それ以来、多数の検査をこなさなければならないときは「コキアコキア……」とおまじないのように心で唱えながら、手と頭を動かしています。そうして集中して目の前の仕事を処理していき、正確に滞りなく進められたときは、やりとげたという達成感があります。
達成感といえば、今の研究室は、通常の業務に加え、興味のある分野やその周りの技術も習得することができます。また、BRCの5つのリソースや情報など異分野の研究室の方たちと交流する機会もあり、知りたいことを積極的に情報収集できる環境です。テクニカルスタッフでも興味のあることを室長に提案して自主的に研究を進めることができるので、いろいろなことにチャレンジしてみたい方はやりがいを感じられると思います。
影響を受けた人、大切にしていること
そんな自分が影響を受けた人――と改めて考えてみると、両親が一番に思い浮かびます。両親は地元で畑作農家を営んでおり、小さいころから私も畑仕事を手伝っていました。母はとにかく仕事が早く正確で、いまだに母の迅速さにはかないません。一方、父は自分の代から農家を始め、農業にとても実直に取り組んできた人です。採れた作物もよく観察していて、その分作業の手は遅めですが、丁寧な観察や誠実な対応のおかげか記録的冷夏などの自然災害を何度も乗り越えていました。両親とは異なる道を選択していますが、仕事をしている自分のなかに、二人の姿をふと見出したりします。
![篠木晶子テクニカルスタッフⅡ 写真3](https://web.brc.riken.jp/ja/wp-content/uploads/diversity/jmc24_03.png)
仕事をする上で大切にしているのは、素直であることと、誠実であることです。素直な人とは周囲も自然に助け合いたくなりますし、誠実であれば、当然ですが手抜きもしない、手順も守ってデータも誠実なものになる、と信じて取り組んでいます。
私たちの研究室で実施している突然変異マウスや遺伝子改変マウス系統の表現型解析は、ヒト疾患の病態理解を目指すための医療研究に大きく貢献するものです。今後も検査を通してそれを支える一人として、チームのスタッフと協力しながら、真摯に業務に取り組んでいきたいと思っています。
- ※1 小さな遺伝的差異を検出する方法
- ※2 DNAの多様性を検出する方法の一つ
プロフィール
- 篠木晶子
- マウス表現型解析技術室/テクニカルスタッフⅡ
- 2002年入所。現在は、突然変異マウスや遺伝子改変マウス系統の表現型解析を実施。国際共同プログラムである国際マウス表現型解析コンソーシアム(IMPC:International Mouse Phenotyping Consortium)で国際的な貢献も果たす研究室で生化学検査に携わる。
公開日:2025年01月24日