エンドユーザーを意識した バイオリソース情報発信に取り組む
(臼田テクニカルスタッフⅡ)
BRCは、さまざまな業務に携わる職員に支えられています。BRCを構成する12の研究室の職員に、研究室での活動や日々の取組などについてインタビューしました。
今回お話しいただくのは、統合情報開発室でテクニカルスタッフⅡを務める、臼田大輝さん。
別部署での情報管理の効率化作業からプログラミングに興味を持ち、BRCのバイオリソース関連情報を利活用するための3つのプログラムを運営する現部署へ。仕事に対する想い、今後目指したいことなどについてうかがいました。
「マウスの取り持つ縁」でBRCへ 仕事を通して情報系を目指す
学生時代は生態学を専攻していて、「日本のマウスはどこから来たか」といったテーマで、野生マウスの遺伝学的な研究に取り組んでいました。人間と共生してきた生き物であるマウスの歴史がわかれば人間の歴史への理解にもつながるということで興味を持ちました。
学生時代に所属していた研究室の先生と、入所後に在籍していた部署(現在のマウス表現型解析技術室)のチームリーダーがマウスを扱う研究において交流があったことがきっかけで、BRCで派遣スタッフとして勤務することになりました。そこではマウスの行動実験のほか、遺伝子解析、PCRなど実際に手を動かす仕事を中心に行っていました。
実は、今の仕事は、前部署での業務効率化の取り組みがきっかけになっている部分があります。そこでもデータ管理をしていたのですが、効率化を図るため、情報系の技術をもっと使ってみることにしたのです。Excelの計算式などから始まって、データの処理がしやすくなるRやPythonなどのプログラミング言語を使うようになり、少しずつ身に付けていくうちに、情報技術への興味がわいてきました。
プログラミングは当初自分のために勉強し始めたのですが、少しずつ業務に活かし、効率的に業務を進められる形を作っていきました。結果的に、情報技術に興味があって取り組んできたさまざまなことが実績となり、今の室長が統合情報開発室を立ちあげたタイミングで、テクニカルスタッフとして入所しました。
最大のやりがいは好反応 ユーザーの気持ちを大切に作る
私が現在所属する統合情報開発室では、バイオリソースを研究や産業分野に広く効果的に利活用するために、ゲノム情報、表現型情報、利活用情報をはじめとしたリソースの関連情報を記述・統合する情報技術開発を行っています。それと同時に、ホームページやデータベースを通して、バイオリソース情報を世界に発信する業務を担っています。
バイオリソースが科学の基盤として機能するために不可欠な要素である情報を扱うこの研究室には、ウェブコンテンツ作成、サーバーおよびセキュリティ管理、生命科学分野におけるビッグデータ解析および情報統合技術など、各分野で情報系技術に長けたメンバーが揃っています。
私自身は、バイオリソース情報を国際的に共有し活用する仕組みの整備や、バイオリソース表現型データをユーザーにわかりやすく提示するための業務に携わっています。具体的には、まず各開発室からバイオリソースのデータを提供してもらい、遺伝子・疾患・表現型・環境などのバイオリソースに紐づくメタデータから外部の公的機関が公開している情報と統合することで付加価値を付けて情報を発信していくというものです。例えば、遺伝子情報においては外部データに収録されている遺伝子名、別名、相同遺伝子の情報、関連する疾患情報などを活用しています。チーム内でのミッションとしては、開発室から提供されたデータの管理、ほかにはデータをつなげるためのプログラミングなどがあります。
仕事をしていてやりがいや達成感を覚えるのは、バイオリソースのウェブカタログなどの他開発室のデータを扱う業務で、先方の室員の方に肯定的な意見をもらえたときなど、自分の仕事に対して関係者やユーザーからレスポンスがあったときです。
今、反応がよく返ってくるのは、内部向けに作っている開発中のサービスについてです。前の部署ではチーム内の仕事が多くて研究室を越えた交流はほぼなかったのですが、現在は仕事でデータをいただく関係上、いろいろな部署の方とつながっています。Slackなどでやりとりしていることもあって、ダイレクトに厳しい意見をもらったりもします。「もっとこうしてほしい」と難しいリクエストがあったときも、簡単な作業ではないからこそ達成できたときは手応えがあります。
好きな言葉は「粉骨砕身」 とにかく手を動かしてやってみる
私はじっくり考えて組み立ててから仕事をするのが苦手で、まずは手を動かしていろいろやってみるタイプです。「粉骨砕身」という言葉が好きなのですが、やりたいことに取り組んでいるときは、まさにそんな感じでひたすら目の前の作業に打ち込んでいます。
ただ、すぐにやってみたいという思いから失敗した経験もあります。以前、プログラムにミスがあってサーバーに負荷をかけてダウンさせてしまい、サーバー管理者の方に迷惑をかけてしまったことがあり、室長からはもっと慎重にデータを確認するように言われました。この一件から気づいたのは、それまでの自分は木を見て森を見ずといいますか、担当する仕事に集中するあまり、研究室の業務全体をスムーズかつ効率的に運ぶための配慮を怠っていたということです。これ以降、全体を意識して業務に取り組むようになったことで、結果的に担当する仕事もより要求される水準を満たせるようになりました。
仕事は日々やりがいを感じていますが、やっぱり「楽しいこと」と言えば、プライベートのときですね。たとえばポケモンにハマっている4歳になる娘とアニメを観ているときがそうです。これも、アプリケーションのユーザーインターフェース(※1)開発のイメージ等にも役に立っているかもしれません。
今後は、ユーザー等からのレスポンスを通しての気づきを含め、現場での経験から学んだことを精査し、情報系の技術をさらに磨いて、自身の成果として公開できるようなウェブアプリケーションを開発したいと考えています。ほかには、以前在籍していたチームのデータベースの基盤がかなり老朽化してきており、それを刷新しようというプロジェクトがあるため、そのチームのデータベースの仕組みがわかっている自分も関わる予定です。自分を育ててくれたチームでもあるので、このプロジェクトでは「粉骨砕身」の本領を発揮し、これまで培ってきたスキルと手をフル稼働させてぜひ貢献したいと思っています。
- ※1 アプリケーションの見た目や使いやすさを設計すること
プロフィール
- 臼田大輝
- 統合情報開発室/テクニカルスタッフⅡ
- 2010年から派遣スタッフとして別チームで勤務後、2017年にテクニカルスタッフとして入所。現在は、バイオリソース情報を国際的に共有することを目指すシステム整備に携わる。
公開日:2024年9月27日