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BRCについて

日進月歩の品質管理業務に尽力
多様な人材をつなげる取り組みも(野口上級技師)

BRC は、さまざまな業務に携わる職員に支えられています。BRC を構成する12の研究室の職員に、研究室での活動や日々の取組などについてインタビューしました。

今回お話しいただくのは、細胞材料開発室で上級技師を務める、野口道也さん

さまざまな細胞を国内外の研究コミュニティーに提供するための品質管理業務に従事しながら、所内の所属を越えた人的交流の中核を担う野口さん。そのやりがいや目指すところについてうかがいました。

野口上級技師 写真3

品質管理の重要性とやりがい
自分の強みとなった留学経験

BRCではマウス、植物、細胞、遺伝子、微生物という5つのバイオリソース(生物資源)を提供しています。そのなかで私の所属する細胞材料開発室では世界の研究者が開発した細胞を収集し、厳密な品質管理を実施し、実験再現性のある高品質な細胞材料を国内外の研究コミュニティーに提供する業務を行っています。

品質検査の世界も日進月歩で、昔はわからなかったことも、詳細な解析が実施されることで、今では細かい部分までわかるようになっています。細胞は見た目が似ているので、外見だけでは何の生物の細胞か判別できません。研究者から細胞の寄託を受けた際も、以前はどの生物の由来の細胞か詳細に調べる方法がありませんでした。

しかし現在は、ヒト由来の細胞では個体識別はでき、また、それ以外の動物由来の細胞でも、遺伝子検査で動物種を比較的簡単に判別できるようになっています。

生命科学研究に貢献する細胞材料の品質検査は非常に重要なものです。その過程で細胞の取り違えや細胞汚染などが判明し、研究コミュニティーへ提供する前に発見できたときは仕事にやりがいを感じます。

検査技術や情報は常に更新されていくため、今後も世界最高水準のクオリティの高い細胞材料を提供できる品質管理を心がけていきたいです。

ほかには、細胞を提供した海外のユーザーからの「細胞培養が上手くできない」という問い合わせに対し、こちらからのフィードバックが上手くいき、結果的に細胞の培養が無事にできたという報告を受けたときにもやりがいを感じます。

私の強みの一つに、アメリカの大学に進学した経験から英語でのやりとりが得意ということがあります。文系の大学で教えていた父親から「英語を使えるようになるだけで価値がある」と言われ、海外で学ぶことを猛烈に推されて留学しました。自分は内気な性格だったこともあり、今振り返ると父の勧めで留学ができたことに本当に感謝しています。

日本の研究者の方から細胞材料や実験方法などに関する問い合わせを受けることもよくあり、自分の知識を伝えて人の役に立てることは大きな喜びになっています。違う道を選びはしましたが、どこか父親の影響を感じます。

野口上級技師 写真2

警察官に憧れた子ども時代
現在は公私で「違いの分かる男」を目指す

小さいころの将来の夢は警察官でした。人を助ける職業に憧れていたのだと思います。警察の仕事について調べてみると、DNA鑑定など科学捜査に興味が出てきて、そうした捜査をする警察職員になりたいと思っていました。仕事でヒト由来細胞の個人識別検査をしていると、当時を思い出して感慨深いものがあります。

私が教訓としている言葉には、「Stop and smell the roses.」「Done is better than perfect.」「No chocolate, no life.」「違いの分かる男」――といろいろあるのですが、最後の「違いの分かる男」は、公私ともに重要なキーワードになっています。

これに関連するプライベートでの重要ミッションとして、妻や同居の義母が美容室に行った日は24時間以内に気づくことを自分に課しています。先日も勇気を出して義母に声をかけたところ、「今日は行ってないけど、、、」と言われ、細胞の違いを見分けるほうがある意味簡単かもしれません。

BRCの恵まれた研究環境
多様な人材をさらに活かすために

高校のときは数学、物理など理系が得意で生き物が好きだったので、アメリカの大学では生物学を専攻しました。 日本で大学院修士課程に在籍の際、学生を受け入れてくれる研究機関のプログラムがいくつかありました。そのなかから自分の研究分野で、最先端の研究ができる理研を選び、入所に至りました。

理研にはとても恵まれた研究環境があります。特に多様なバイオリソースをとりそろえたBRCでは、世界でも有名な研究者が在籍しており、研究室を越えていろいろなアドバイスを得ることも可能です。

研究現場に求められるのは「人材の多様性」といわれますが、同時にそれを最大限に活かすために重要になるのが、多様な人材がお互いに理解し合い、協同していく「場づくり」だと思います。

野口上級技師 写真3

BRCでは10年前から職場を越えた異分野交流の機会として「Wakate BRC Conference(WBC)」を開催しています。これはBRC独自の交流イベントで、普段は接点のない研究員たちや事務職員たちが専門分野の垣根を超えた交流を通してお互いのスキルを理解して、その情報を共有しスキルアップしていくためのものです。

Wakateは「若手」ですが、もちろん誰でも参加可能で、若い世代から年長者まで年代を越えた幅広い層の交流の場を目指しており「年齢に関係なく、どなたでも参加できます」と注意事項を入れたところ、先輩職員から「参加しやすかった」との声をいただき、とても嬉しかったです。

年齢に関係なく楽しめる「青春18きっぷ」のように、周知されることで誰でも気軽に参加できる交流会として、今後もさらに盛り上げていけたらと思っています。

プロフィール

  1. 野口道也
  2. 細胞材料開発室/上級技師
  3. 理研BRC・遺伝子材料開発室を経て、2009年より現研究室に所属。現在は品質管理部門長としてすべての細胞の品質管理に携わるほか、センター内のイベント等を通して人的交流促進にも精力的に取り組む。

公開日:2024年4月23日