理系が苦手でも研究者として活躍できる
”好き”ならばぜひ挑戦を (越後貫専任技師)
BRCには、さまざまな分野で活躍する女性が多数在籍しています。そこで、各々のライフスタイルにあった働き方で輝き続ける12名の女性職員にインタビュー。
今回お話しいただくのは、遺伝工学基盤技術室で専任技師を務める、越後貫成美さん。
数学や理科は苦手ながら、夢と熱意を持って理系の大学へ進学。卵子の美しさに魅了され、大学時代から現在まで一貫し、卵子を扱う研究を続けています。仕事に対する思い、やりがい、今後の展望などを語ってもらいました。
プロフィール
- 越後貫成美
- 遺伝工学基盤技術室/専任技師
- 大学時代に卵子の美しさに感動し、発生工学を学ぶ。2002年に理化学研究所に入所し、「顕微授精技術を用いた発生工学的研究」をテーマに研究を続ける。研究室では顕微授精技術の開発を担当する。
卵子の美しさに心奪われ 20年以上同じ研究を続ける
「大きなニワトリを作れたら、もっと大きなフライドチキンが食べられるのになー」。研究者を目指そうと思ったのは、中学生の頃にふと抱いたこんな欲望がはじまりでした。
ならば研究者になって自分で作ればいいんだとひらめき、研究職に興味を持つように。程なくして大きなニワトリは作れないということがわかりがっかりしたけれど、“実験をやってみたい”という気持ちは変わりませんでした。
苦手な数学や理科は熱意でなんとかカバーして、理系の大学へ進学。入学後しばらくはどの分野を専攻しようか迷っていましたが、2年生のときに実習で体験したマウスの体外受精に強い衝撃を受け、発生工学を選択することにしました。卵子そのものや、目を持たない精子が卵子に向かって泳いでいく様子が、神秘的でとても美しかったのです。
その時から現在までずっと、「受精」をテーマに研究を続けています。研究歴の長い研究者は多少なりとも途中でテーマを変えられている方がほとんどなので、私のようなケースはなかなか珍しいと思います。
卵子も精子も20年以上見ていても飽きないし、毎回その美しさにほれぼれします。好きなテーマで研究を続けられていることを、とても幸せに感じています。
等身大の自分が受け入れられ ストレスフリーな研究生活を送る
前職でお世話になっていたボスから声をかけていただき、理化学研究所の面接を受けることになったのですが、やはり理化学研究所というと“頭がいい”というメージ。私で大丈夫かと不安もありました。
とは言え面接で着飾ってもしかたないので、なぜこの職業に就いたのかという質問に対し、大きなフライドチキンの話を正直に回答。すると、おもしろいねと笑ってもらえました。想像よりもずっとソフトな雰囲気でしたし、いろんな発想の人を受け入れてくれるんだということを嬉しく思いました。
入所後、環境にも人間関係にも恵まれ、当初の不安は杞憂に終わりました。現在もストレスになる要素がなく、楽しく研究に励めています。
また、私は山が好きで、休日は登山やキャンプ、トレイルランニングやアドベンチャーレースをすることが多いのですが、メンバーの皆さんがそんなちょっと変わった趣味を理解し、応援してくださっているというのもありがたいところです。職場で等身大の自分でいられるというのも、働きやすさの一因ではないでしょうか。
理系が苦手でも研究者として活躍できる。
“好き”ならばぜひ挑戦を
研究職は、失敗さえも成果になる世界です。いい結果ばかりが求められるわけではなく、失敗は失敗で認めてもらえる。これは非常に恵まれているし、他の職業にはない素晴らしい点です。
将来研究に関わる道に進みたいと考えている人は、その分野が好きであれば、得意じゃなくてもチャレンジしてみるのもいいと私は思います。生物には興味があるけど、数学が苦手だからと諦めてしまうのはもったいない! 実際私も理系向きの頭ではなかったけれど、“知りたい!”という思いだけでここまでやってきたし、成果も出せています。天才じゃないからこそ、天才では思いつかないようなアイデアが閃くのでは!と前向きに解釈して日々研究に勤しんでいます。
今は数学ができなくても、ネットやパソコンなど文明の利器を使えばなんとかなります。便利なものはどんどん活用して、ぜひ研究者になる道を切り開いていただきたいです。
今後の個人的な目標は、仕事もプライベートも楽しむこと。「実験が昨日よりスムーズにできた!」、「今日はスカイツリーが見える!」。そんな小さな発見を毎日ひとつは見つけながら、心豊かに過ごしていきたいです。