目に見えない微生物の力を、農業へと活かす
(成川開発研究員)
BRCには、さまざまな分野で活躍する女性が多数在籍しています。そこで、各々のライフスタイルにあった働き方で輝き続ける12名の女性職員にインタビュー。
今回お話しいただくのは、植物-微生物共生研究開発チームで開発研究員を務める、成川恵さん。
植物が好きなことから、研究職の道へ。実社会に還元できる研究にも携わり、達成感のある日々を過ごしていると話します。仕事に対する思い、やりがい、今後の展望などを語ってもらいました。
プロフィール
- 成川恵
- 植物-微生物共生研究開発チーム/開発研究員
- 前職は大阪大学の微生物病研究所。2020年に理化学研究所に入所。研究対象を腸内細菌から植物・土壌に生息する環境微生物に変え、さまざまな微生物の培養、その相互関係を調べる研究に携わる。
流れに身を任せて 研究の世界へ
研究職を意識したのは大学院を卒業してからで、だいぶ遅咲きです。進学した東京理科大学では、大学4年生から卒業研究が始まります。そのときのレタスの研究がおもしろく、大学に泊まり込みで実験を行っていたほどでしたが、当時は博士課程への進学は考えてもいませんでした。
修士課程修了後は、研究に関わる仕事がしたいと思い、産業技術総合研究所にテクニカルスタッフとして入所しました。仕事は楽しかったのですが、大学で行っていた研究の先が見たかったことと、研究員として主体的に研究を進めてみたいという思いもあり、産業技術総合研究所を退所して、博士課程に進学し学位を取得しました。
その後は、植物の生理学から始まり、植物病原糸状菌の病原性研究や農業の現場を経て、動物の腸内細菌の研究などさまざまな分野を経験。広く浅くの経験ではありますが、いろいろなことにチャレンジする勇気を持ち、“挑戦することで道は開ける”ということを実感できたことはよかったと思います。
実生活に役立つ研究で 社会貢献を目指す
私たちの研究室は企業との共同研究も行っており、農業現場に役立つ資材開発など“実用化”を目的とした研究にも取り組んでいます。
例えば今取り組んでいるのは、植物に病害を起こす菌を抑える力を持った微生物を探すという研究です。このような微生物を大量に見つけ出し使用方法を確立することで、これまで植物の病気を防ぐために撒いていた農薬の使用を減らすというのが、研究目的のひとつです。このプロジェクトでは、画期的な手法や技術を駆使して、これまでにないスケールで研究を展開しています。
現代農業では、SDGsに基づき地球環境に負荷を与える化学肥料や化学農薬の使用を制限した「農業革新」をすることが、緊急の課題となっています。このような研究にも力を入れ、農業界、そして社会への貢献を目指していきたいです。
「継続は力なり」の言葉を胸に 研究に励んでいく
実験をしていて特に心が高鳴る瞬間は、予想外の結果が得られたときです。研究を始めた頃は、結果が予想通りであることに喜びを覚えたものでしたが、だんだんと自分の予想から外れた現象におもしろみを感じるようになりました。「予想通りの結果にならない」ということは、そこに新しいことが隠れているということであり、それが何なのかを突き詰めていくことにやりがいを感じています。
また、私は特に運が良く、周りの人々に恵まれることが多いと感じています。これまで私は、「誰も見たことのないものや景色を最初に見てみたい」という、ある意味自分勝手な気持ちだけで突っ走ってきました。その中で研究に関わる仕事を続けてこられたのは、私や私の研究を支え、助けてくれる人の存在があったからです。
私の好きな言葉に、「継続は力なり」というものがあります。研究は続けていないと見つからないものが多く、諦めたらそこで終わりになってしまうものでもあります。まだまだ、やりたいことはたくさんありますし、これからも「継続は力なり」の精神で、とことんまで突き詰めた研究をやっていけたらと思います。