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BRCについて

新しいものを見つけ出す楽しさ 次世代を育てる糧に
(井上専任研究員)

井上専任研究員 写真1

BRCには、さまざまな分野で活躍する女性が多数在籍しています。そこで、各々のライフスタイルにあった働き方で輝き続ける12名の女性職員にインタビュー。

今回お話しいただくのは、遺伝工学基盤技術室で専任研究員を務める、井上貴美子さん。

クローン技術の向上を目指し、日々研究に取り組んでいます。育児と仕事の両立も前向きに乗り切り、次は自分が人を支える立場になりたいと思っているそう。仕事に対する思い、やりがい、今後の展望などを語ってもらいました。

プロフィール

  1. 井上貴美子
  2. 遺伝工学基盤技術室/専任研究員
  3. 大学院では、ミトコンドリアのDNAについて学ぶ。国立感染症研究所での研究員を経て、2002年に理化学研究所に入所し、遺伝工学基盤技術室の立ち上げに携わる。現在は、マウスの胚操作に関する技術開発を担当する。

DNAの可能性に衝撃を受けた高校時代
現在はクローンの実用化を目指す

研究職に興味を持ったのは、高校時代に話題となった「ミトコンドリア・イブ」が大きな要因でした。これはアメリカで行われた研究で、世界中のヒトから採取したミトコンドリアDNAを調べて先祖を遡っていくと、誰もが共通するアフリカの一人の女性に辿りつくというものでした。当時の私は、DNAからヒトの系譜を辿れること、そして誰の起源を追っても同じ女性に行きつくことに、衝撃と感動を受けました。

そこから研究のおもしろさに引き込まれ、理系の大学へ。卒業研究のときに入った研究室で運よくミトコンドリアの研究に携わることができ、大学院ではミトコンドリアDNAの研究を行いました。その過程でマウスの受精卵を扱ったことがきっかけとなり、クローンマウスの研究へ。分野は違いますが、学生時代に培った知識と経験は今でも非常に役に立っています。

たったひとつの体細胞から新たな個体を作り出すことができるのがクローン技術ですが、今の技術では限定された一部の体細胞からしか個体を作ることができません。将来的には、体のどの細胞からでもクローンを作れるというところまで技術力を高めたいと思っています。例えば血液からクローンを作ることができれば、より多くの野生動物や絶滅危惧種を救うこともできるはずです。クローンの実用化を目指し、社会に役立てていきたいです。

困難の中から新しいものを見つけ出すことに
研究職としてのやりがいと楽しさを感じる

井上専任研究員 写真2

理研のみなさんは、困難に立ち向かいつつも、仕事・研究を楽しんでいる印象があります。私もそのひとりですが、誰も知らない真実を自分の手で見つけられるという喜びは、やはり他にはない研究職ならではの魅力なのだと思います。

研究は自分で仮説を組んでから実証実験を進めるのですが、予想通りの結果が出たときの感覚・喜びは言葉では言い表せないものがあります。長年研究を続けていてもなかなか体験できる機会は少ないですが、「今この事実を知っているのは世界で自分ひとりだ」という瞬間を味わえるのも、研究職の醍醐味のひとつではないでしょうか。

もちろん、研究はうまくいくことばかりではありません。でもダメだったで終わらせるのではなく、その理由を自分で検証していくことが大事だと思っています。

そのためにも、日々の努力は研究者にとって大切です。残念ながら昨今のコロナ禍により、人に会う機会は減りましたが、それとは裏腹に研究室にいながらにして、世界中のセミナーに参加できる機会が増えてきています。私も、さまざまなセミナーに参加したり、論文を読むなどして他の人の知見を吸収し、それを自身の研究にどう活かせるかを常に意識しています。

一方で、知識を入れすぎると、実験をやる前から頭で考えて可能性をはじいてしまう恐れもあります。なので知識だけでなく、日々の研究のなかで自分が見たもの、感じたことも大事にしなければいけません。「常識を疑う」というのは研究者にとって必要な感覚だと思います。

周りに助けてもらったことを 次の世代に還元したい

研究職は実働時間が長く大変な職業ではありますが、その一方で自分の管理でスケジュールの調整ができるというのは、大きなメリットだと感じています。私自身、保育園や学校の行事のため日中に仕事を抜けたり、子供の病気のために急に休みを取ったりと、特に子育てが大変な時期はこの働き方にとても助けられました。

また、チームの皆さんは子育てしながら仕事をすることにとても理解があり、精神的にも非常に救われています。とりわけ女性メンバーの存在は大きく、子どもの急なお迎えや休みにも嫌な顔ひとつせずサポートしてくださり、このような環境で働けることに幾度となく感謝したものです。それだけではなく、自身も不測の事態に備えて、常にプランBを準備するなど、育児とともにより時間の使い方を意識するようになりました。子育てが落ち着いてきた今、次は私が小さな子を持つ方をサポートする番だと思っています。次世代の方にも安心して働いてもらえるよう、チームに根付くいい風習を継承していきたいです。

子どもが小学校高学年になり手がかからなくなったと言っても、休日は今も子どもが主体です。最近は、親子で遠くの公園までサイクリングに行ったりしています。
私は普段から“時間は全ての人にとって平等な資源である”ということを意識しています。これからも子どもの成長を噛みしめつつ、仕事もプライベートも一日一日を大切にしながら過ごしていきたいです。

井上専任研究員 写真3