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BRCについて

小さい子どもを抱えての復職
慌ただしい毎日での小さな疑問を研究へつなげる
(井内テクニカルスタッフII)

井内テクニカルスタッフII 写真1

BRCには、さまざまな分野で活躍する女性が多数在籍しています。そこで、各々のライフスタイルにあった働き方で輝き続ける12名の女性職員にインタビュー。

今回お話しいただくのは、実験植物開発室でテクニカルスタッフを務める、井内敦子さん。

小さい子どもを抱えて復職し、慌ただしい時期を乗り切った現在。周りへの感謝の気持ちを忘れずに、謙虚に研究に取り組み続けています。仕事に対する思い、やりがい、今後の展望などを語ってもらいました。

プロフィール

  1. 井内敦子
  2. 実験植物開発室/テクニカルスタッフII
  3. 2003年から派遣社員としてプロジェクトに参加し、設立して間もないバイオリソースセンターでバイオリソースの品質管理や共同研究などに携わる。2010年にテクニカルスタッフとして入所し、現在は植物バイオリソースの品質管理とその技術開発、植物微生物共生研究を担当する。

産後、派遣社員として理化学研究所へ
チームに支えられ、育児と仕事を両立

理化学研究所で働くことになったのは2003年の頃でした。それまでは他の研究所に所属していましたが、転居に伴い退職。そのまま出産、育児でしばらく仕事から離れていましたが、子どもが1歳のときに保育園が決まり、派遣社員として仕事復帰することになったのです。とは言え、産後初めての職場に不安もあったし、「小さな我が子を預けてまで働くことなのか?」という葛藤もありました。

ですが、室長がとても育児に積極的な方で、チーム全体が子育てに理解を示してくれていたので、安心して業務に取り組むことができました。周りの方々の励ましとサポートがあったから、育児が大変な時期も乗り越えられたのだと感じています。

また、外に出て母親ではない顔を持てたことは、ある意味気分転換にもなりました。仕事も育児も、それぞれにしか味わえない喜びや悔しさ、達成感があります。育児が仕事の、仕事が育児のモチベーションを上げてくれて、慌ただしくも充実した日々を過ごすことができました。

ブランクを最小限に抑えキャリアを積むこともできたので、結果的に早いタイミングで復職してよかったと感じています。現在は子育て支援の制度もより整えられているので、今後子どもを産む予定の方、現在子育て中の方も、自分に合った働き方ができるのではないかと思います。

研究を通して、物事を前向きに考えられるように

井内テクニカルスタッフII 写真2

現在担当している業務のひとつに「遺伝型解析」という手法があります。これは、乾燥に強い、病気に強い、背丈が高いというような“生物の個体差”に、どの遺伝子領域が関わっているのかを調べる手法です。果てしなくある可能性の中からひとつの正解を導き出すのは根気のいる作業ですが、私が得意としている解析でもあります。

研究を始める前に自分でも仮説を立てるのですが、経験を積んだ今も仮説がきっちり当たるのは稀です。その分的中したときは、「きたー!」とガッツポーズをしてしまうほど嬉しいですし、とてもやりがいを感じます。

一方で、なぜこのような結果が出たのか理由がわからないまま終わることも、時にはあります。それが研究を続けていくと、5年後、10年後にその理由がわかることがあるんです。ここが研究のおもしろいところでもあり、奥深いところ。今行っている研究がいつどこで役に立つかわからないので、常にアンテナを張り巡らせていることが大切です。

このことは、私の考え方にも影響を与えてくれました。例えば辛いことがあったり、失敗をしたときも、「これは前に進むために必要なものなんだ」とポジティブに捉えられるようになりました。研究のように、あとから振り返ったときに「あれは意味があったんだね」と思えるよう、失敗に立ち止まることなく常に前進していきたいと思っています。

日常の小さな疑問を見逃さず 研究者としての感性を磨く

研究を続けていると、時には煮詰まることもあります。ですが考えすぎるといいアイデアも出てこないので、土日はあえて仕事のことを考えないようにしています。それでも仕事のことが頭から離れないときは、ランニングで強制的にリセット。走っているうちに苦しさのほうが勝って、自然と考えられなくなるんです。おかげで頭も体もスッキリして、週明け新たな気持ちで仕事に挑めています。

また、私がいつも意識しているのが「周りに感謝をする」こと。理化学研究で長く研究を続けられているのは、人と人との繋がり、ご縁があったからこそ。何事においても、今の環境や状況が当たり前と思わず、感謝の気持ちを忘れずにいることが大切だと思っています。

もうひとつ、この仕事を続けるうえで大事にしているのが、“日常の疑問を大切にする”ことです。例えば料理中に「どうしたらもっとおいしくなるだろう?」と考えるような、小さなことでいいんです。研究職にはこういう好奇心こそが必要ですし、さまざまなことに疑問を持てる人はこの仕事に向いていると思います。研究職を目指している人は、ぜひこの感性を磨いていただきたいです。

井内テクニカルスタッフII 写真3