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BRCについて

バンク事業立ち上げ、研究者の意識改革に挑む
(西條特別嘱託技師)

西條特別嘱託技師 写真1

BRCには、さまざまな分野で活躍する女性が多数在籍しています。そこで、各々のライフスタイルにあった働き方で輝き続ける12名の女性職員にインタビュー。

今回お話しいただくのは、細胞材料開発室で特別嘱託技師を務める、西條薫さん。

理科の先生になりたいと思っていたけれど、卒業論文の流れで理化学研究所の入所が決まり研究の世界へ。そこから30年以上在籍し、バイオリソース研究センターのバンク業務の立ち上げにも尽力するなど多くの功績を残しています。仕事に対する思い、やりがい、今後の展望などを語ってもらいました。

プロフィール

  1. 西條薫さん
  2. 細胞材料開発室/特別嘱託技師
  3. 1985年、業務委託の形で理化学研究所へ。1991年に研究技師として正式に入所し、現在まで理化学研究所一本で活躍を続ける。バイオリソース研究センターの前身となる「ジーンバンク室」及び、バイオリソース研究センターのバンク業務立ち上げにも携わる。現在は、細胞バンク業務全般のマネージメントを担う。

高校の先生に憧れ教師を目指すも 気がついたら研究職の道へ

もともと数学のような“自分の考えをまとめて答えを出す”という教科が好きで、理系の学部に進学。人と関わるのが好きだったこと、高校時代の先生に影響を受け憧れを抱いたことから、当時は教員になりたいと思っていました。

ですが、細胞に関する研究をまとめた卒業論文の作成中に、研究者の方に声をかけていただいて理化学研究所へ入所することに。気が付いたら研究職に就いていたという感覚でしたが、“実験は成功失敗に関わらず答えが出る”という点が私の性格に合っていたので、結果的にこの職に就けたことは幸運でした。

当初の夢とは違う道を進みましたが、教員を目指すきっかけになった先生から影響を受けた「ものを多角的に見る」という考え方は、研究の世界でも非常に役立っています。例えば実験でひとつの答えが出たときにも、「違う面から見たらこの答えは本当に正しいのか?」と一歩引いて考え、実験結果の精度を上げることができたと思っています。

また、経験を積むと理化学研究所の内外から細胞培養の相談を受けるようになりました。自分のアドバイスによって実験が上手くいったと聞くととても嬉しいですし、先生になりたかった思いが融合してきたようで喜びを感じています。

バンク事業の立ち上げに貢献 研究者の意識改革に挑む

西條特別嘱託技師 写真2

今では想像がつかないかもしれませんが、1980年代後半ぐらいまでは、バイオリソース(研究材料)は隣の研究室などからもらうというのが一般的でした。「この細胞ある?ちょうだい」という感じで、近くにあればもらって増やす、誰かが欲しいと言えばまたそれをあげるという状態です。

品質管理状況が甘いなかで又渡しをするため、途中で細胞の性質が変わってしまったり、細胞の取り違いが起こってしまうことも多々ありました。そこで、そのようなトラブルを防ぐべく、1985年にバイオリソースのバンク業務を行う「ジーンバンク室」が新設されることに。

立ち上げ時、何より大変だったのは、みなさんにバンク業務の必要性を理解してもらうことでした。今までは気軽に無償でやり取りしていた細胞を、ジーンバンク室を通して有償で入手しなければならないので、「どうしてお金を出さないといけないのか」という声が出てくるのも当然のことです。

また、研究者から細胞を預かる“寄託”に関しても、「預けても勝手に人に配られるのでは」と疑う人がほとんど。その逆風のなかで、正しい細胞で研究すること、寄託・提供の手続きの重要性を地道に提唱し続け、少しずつ信頼を得てバンク事業が認められるようになっていきました。

2001年には現在のバイオリソース研究センターが設立され、おかげさまで多くの研究者の方に安心して利用していただいています。立ち上げ時はわからないことも多く試行錯誤の連続でしたが、研究の発展に一役買うことができたことを誇りに思っています。

研究職には女性が活躍するポジションも。
さまざまな挑戦方法があることを伝えたい

BRCには高校生の見学者も多く、女子高校生に「どうしたらこういう職場で働けますか?」と質問をいただくこともよくあります。研究の仕事は研究者にならないとできないというイメージの方も多いようですが、例えば研究者のサポートをする“テクニカルスタッフ”(研究支援員)など、研究者以外のポジションもあるのです。

細かい作業や、細胞やマウスなど“ものを育てる”という作業は女性が向いている傾向が強く、BRCでは多くの女性がテクニカルスタッフとして活躍しています。実験が好き、理系の職業に就きたいという方は、そのようなチャレンジの仕方もあることをぜひ知っていただきたいですね。

私は2020年に定年を迎え、現在は特別嘱託技師として在籍していますが、嘱託の期間も5年と決まっています。今は次世代の育成期間だと思い、業務の引継ぎも進めているところです。技術も思いも、しっかりバトンを継承したいと思います。

嘱託期間が終わった後は、世界遺産や自然遺産巡りをしてみたいなと計画中です。私の座右の銘でもある「心と体を健康に」を継続しながら、残りの研究生活も、その後の人生も謳歌していきたいです。

西條特別嘱託技師 写真3