在宅勤務でプライベートが充実
子どもとの関係もより良好に (山田開発技師)
BRCには、さまざまな分野で活躍する女性が多数在籍しています。そこで、各々のライフスタイルにあった働き方で輝き続ける12名の女性職員にインタビュー。
今回お話しいただくのは、マウス表現型解析開発チームで開発技師を務める、山田郁子さん。
もともとは文系でカウンセラーを志望するも、大学の実習で行動薬理学の存在を知り、研究職の道へ進んだという、珍しい経歴の持ち主です。仕事に対する思い、やりがい、今後の展望などを語ってもらいました。
カウンセラーを目指し進学するも行動薬理学に出会い研究の道へ
もともと文系指向で、物理や数学は大の苦手。そんな私が理系の道にシフトチェンジしたのは、大学3年生の実習がきっかけでした。
臨床心理学に興味があり、カウンセラーを志望して大学に入学。“人の心の奥底にあるものを知りたい”と思っていましたが、いざカウンセリングの実習を体験してみると、私の性格はこの職業に向いていないことに気が付きました。
そんな時に、科学的な方法を駆使して心にアプローチする「行動薬理学」に出会いました。行動薬理学とは、心理学と薬理学が融合したもの。方法は違うけれど、“心の奥底にあるものを知る”という目的は同じです。
行動薬理学の実習では、ラットに薬を投与することでかしこくなったり、反対にできていたことができなくなったりと、「脳が変わることで行動が変わる」ことを学びました。半年の実習を経たのち、卒業研究で行動薬理学を選択。さらに知見を深めるべく大学院に進学し、現在に至ります。
文系出身で研究者として理化学研究所に入所した人はあまり多くはないと思いますが、当時積んだ経験と知識は今でも役に立っています。日々新しい発見があり、毎日が充実しているので、あの時思い切って目標を変えてよかったと思っています。
チームならではの達成感でさらに研究が好きになる
私が所属する研究室では、チームで協力してプロジェクトを進めていきます。大学ではすべてひとりで研究を行っていたため最初は戸惑うこともありましたが、チームだからできること、チームだからこその喜びも多く、より一層研究を好きになれたように感じています。
特に印象的だったのが、同じチームの研究員のプロジェクトで多動の原因となる遺伝子を同定(※)し、それが論文に掲載されたときのこと。マウスに薬物を投与して遺伝子を変異させ、その遺伝子の機能を調べるという研究だったのですが、マウスの行動異常を発見したスタッフ、一緒に解析した私、論文を書いた研究員というように、それぞれの仕事のつながりを実感でき、今までにない達成感を味わうことができました。
私が常々大切にしていることに、ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章先生の「研究というのはすぐに役立つものではなくて、人類の知の地平線を拡大するようなもの」という言葉があります。
自分が知の地平線を広げられるかはわからないけれど、自分の研究がまわりまわって、知の地平線を広げる人の役に立てたら……。その願いがひとつ叶えられたようで、研究を続けていてよかったと感じました。
※科学全般の用語で、ある対象についてそれが「何であるか」を突き止めること。
在宅勤務でプライベートが充実
子どもとの関係もより良好に
2年ほど前からコロナ禍をきっかけに在宅勤務を行えるようになりました。在宅勤務の際は主に実験結果のデータを分析して、遺伝子に変異があるとマウスの行動がどのように変化するのかを解析する業務を行っています。
裁量労働制という働き方のためもともと時間の融通は利いていましたが、在宅勤務の日は仕事の合間に家事をできるようになり、主婦でもある私は非常に助かっています。例えば、子どもが学校へ行ったら仕事を始め、お昼には買い出しに行き、子どもの塾の送迎をしてまた仕事をするというように、家事、育児、仕事を自分のペースで配分できるので仕事の効率も上がりました。
それに、私の仕事をしている姿を見るようになったからか、子どもたちが優しくなったような気がします。疲れた日はお風呂にゆっくり浸かってリフレッシュするのですが、以前は「お母さん長い」と怒っていたのに、今は「お疲れさま。ゆっくり入ってね」と言ってくれるように。純粋に嬉しいし、仕事のモチベーションにもなっています。これからも家族との時間を大切にしつつ、知の地平線を少しでも広げられるように、地道に研究に励んでいきたいです。