高効率な蛍光タンパク質導入法の開発
-細胞状態・細胞種を可視化するヒトiPS細胞株群を開発・整備-
理化学研究所(理研)バイオリソース研究センター(BRC)のiPS細胞高次特性解析開発チーム の林 洋平 チームリーダーらの研究チームは、ヒトiPS細胞[1] に対する高効率な蛍光タンパク質導入法を開発しました。
本研究成果は、ヒトiPS細胞を用いた細胞・発生生物学的研究、創薬におけるタンパク質発現を指標とした薬剤候補評価系の構築、再生医療に向けた細胞製造法の確立に貢献すると期待できます。
生きた細胞の状態を可視化するために、指標(マーカー)となる重要な遺伝子発現を、蛍光または発光タンパク質(レポーター)を用いて可視化する研究開発が広く行われています。特にゲノムに直接蛍光タンパク質を組み込むこと(ノックイン)は非常に有効ですが、その効率は低くとどまっています。今回、研究チームは、うまく組み込まれなかった細胞を除去するシステムを開発することにより、ヒトiPS細胞の高効率なノックインを達成するとともに、数々のマーカー遺伝子の蛍光レポーターiPS細胞株群を作製しました。
本研究は、科学雑誌『Cell Reports Methods』オンライン版(12月11日付:日本時間12月12日)に掲載されました。
[1] ヒトiPS細胞
ヒトを含む哺乳類の体細胞に、初期化する能力を持つ因子を導入し、培養すると、その細胞はさまざまな組織や臓器の細胞に分化する能力を持つ多能性幹細胞に変化する。この細胞をiPS細胞(誘導性多能性幹細胞)と呼ぶ。iPSはinduced pluripotent stemの略。