肝疾患の重症化に伴う腸内細菌叢の「シフト」を解明
-エネルギー地形解析で見える肝臓と腸内微生物群集のつながり-
理化学研究所(理研)バイオリソース研究センター (BRC)統合情報開発室の鈴木 健大 研究員、桝屋 啓志 室長、大阪公立大学 大学院医学研究科の大谷 直子 教授、同大学院生活科学研究科の藤井 英樹 教授、慶應義塾大学 先端生命科学研究所の福田 真嗣 特任教授らの共同研究グループは、脂肪肝に伴う炎症の重症度の変化に伴い腸内細菌叢(さいきんそう)がどのように再編されるか(腸内細菌叢の「シフト」)を、環境因子を扱う拡張型のエネルギー地形解析[1]を用いて明らかにしました。
この解析に基づいた評価方法は、肝疾患に関わる微生物バイオマーカー[2]の探索や、病態に応じた予防・介入法の開発に貢献すると期待されます。
本研究成果は、腸内細菌叢を単一の細菌の増減や多様性の増減といった単純な特徴で捉えるのではなく、細菌同士の関係を含む「群集の状態」という新たな枠組みで評価することで、肝疾患に関連する群集の特徴をより的確に抽出できることを示しました。
本研究は、科学雑誌『Scientific Reports』オンライン版(9月25日付)に掲載されました。
補足説明
[1] エネルギー地形解析
解析対象が取り得るさまざまな状態について、それらがどれほど起こりやすいか、どのように変化しやすいかを地形図のように可視化する手法。谷のように低い場所は起こりやすい状態、山のように高い場所は起こりにくい状態を示し、複雑な状態変化を直感的に表現する。本研究では、状態は、細菌種の存在・不在の組み合わせ(群集組成)として表される。それぞれの状態にエネルギーが付与され、環境や生物の関係性のもとで出現しやすい群集組成ほど低いエネルギーを持つ。エネルギー地形の谷底に当たる群集組成は、周囲の状態より安定性が高いと考えられ、安定な共存状態など、特徴的な群集組成であると考えられる。
[2] 微生物バイオマーカー
疾患の有無、重症度、治療反応などを評価するための指標となる微生物または微生物群集の特徴。