iPS細胞を浮遊培養で樹立・大量培養
-突発的分化を防ぐ化合物を見つけ、安定した生産手法を確立-
理化学研究所(理研)バイオリソース研究センター(BRC)iPS細胞高次特性解析開発チームの林洋平チームリーダー、髙﨑真美開発研究員、公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団 研究開発センター、株式会社カネカ 再生・細胞医療研究所らの共同研究グループは、iPS細胞の樹立から、大量培養までを浮遊培養で一貫して行うことに成功しました。
本研究成果は、iPS細胞を用いた再生医療において、産業向けの大量製造法の確立や患者由来iPS細胞の直接的な自家医療の開発に貢献すると期待できます。
従来の接着培養条件下で培養したヒトiPS細胞に比べ、浮遊培養条件下ではヒトiPS細胞が突発的に分化しやすいという課題がありました。しかし、共同研究グループは、2種類の化合物を加えることで、突発的分化が抑制されることを見いだしました。さらに、これらの化合物を添加した浮遊培養条件で、(1)ヒト末梢血単核球からのiPS細胞の樹立、(2)単一細胞を選別してクローン株を拡大、(3)自己複製特性を維持しながらの長期培養、(4)浮遊培養からの直接凍結保存とその直接解凍からの浮遊培養開始、(5)臨床グレードのヒトiPS細胞株の効率的な大量培養、といった、一連の培養プロセスを成功させました。この結果は、ヒトiPS細胞の状態を正確に制御しながら浮遊培養できたことで、安定的かつ自動化された臨床応用への道が開かれることを示しています。
本研究は、科学雑誌『eLife』オンライン版(11月12日付:日本時間11月12日)に掲載されました。