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生物間の関係性の「変わりやすさ」が、農薬かく乱に対する生物密度の安定性に影響することを実験的に解明

自然界では、異なる生物同士が生物間相互作用(捕食-被食、競争、共生など)で互いに結びつき、複雑なネットワークを形成しています。一方、生物は周囲の状況に応じて他者との相互作用を強めたり弱めたり、場合によっては捕食-被食や競争などの敵対的な関係から共生関係へと関係性を変えたりすることが明らかにされてきました。さらに、近年ますます強まる人為的な環境変化に対して、こうした「変わりやすい」という生物間相互作用の性質がどのような機能をもつのかという問いに注目が集まりつつあります。しかし、多数の種が関わりあう複雑な野外の生態系で、相互作用の「変わりやすさ(変動性)」を定量することは容易ではないため、相互作用の変動性がかく乱への生物の応答をどう左右するのかの理解は進んでいないのが現状です。

橋本洸哉助教(弘前大学 農学生命科学部)、早坂大亮准教授(近畿大学 農学部)、角谷拓室長(国立環境研究所)を中心とした研究チームは、江口優志氏(当時・近畿大学 大学院 農学研究科)、瀬古祐吾特別研究員(国立環境研究所)、蔡吉研究員(当時・京都大学 生態学研究センター)、鈴木健大研究員(理化学研究所バイオリソース研究センター(BRC)統合情報開発室)、五箇公一室長(国立環境研究所)とともにこの課題に取り組みました。

本研究の成果から、相互作用の変動性のタイプをあらかじめ把握することで、人為的なかく乱が生じた場合に密度が不安定化しやすい生物を特定し、事前に保全対策を講じる可能性が広がります。本研究は、2024年10月22日19時(日本時間)に、Communications Biology誌に掲載されました。