病原細菌が植物の感染感知能力を無効化する機構の解明
-植物の因子をコントロールして耐病性の向上へ-
理化学研究所(理研)環境資源科学研究センター 植物免疫研究グループの白須賢グループディレクター(環境資源科学研究センター 副センター長)、後藤幸久特別研究員(研究当時)、門田康弘専任研究員、市橋泰範研究員(研究当時。現 バイオリソース研究センター(BRC) 植物-微生物共生研究開発チーム チームリーダー) らの国際共同研究グループは、病原細菌が植物の感染感知能力を無効化する機構を解明しました。
本研究成果により、病原性の高い細菌が植物免疫受容体による認識を巧みに回避して感染する仕組みが分子レベルで明らかになりました。
今回、国際共同研究グループは植物の細胞膜局在型の免疫受容体と複合体を形成する因子を探索し、受容体様リン酸化酵素QSK1を発見しました。このQSK1は免疫受容体の量を減少させる機能を持っていました。さらに興味深いことに、病原細菌Pseudomonas syringae pv. tomato (Pto) DC3000の病原性因子HopF2PtoはQSK1と結合すると植物細胞内で安定化し、免疫受容体の量を劇的に減少させました。また、HopF2Ptoはさまざまな免疫受容体の発現とともに、免疫反応を増強する分子であるファイトサイトカイン、およびファイトサイトカイン受容体の発現も抑制しました。このように、HopF2Ptoは植物免疫の機能を低下させる因子QSK1を用いて植物の感染感知能力を無効化していることが明らかになりました。
本研究は、科学雑誌『The Plant Cell』オンライン版(10月21日付:日本時間10月21日)に掲載され、同誌の特集記事「Hijacking QSK1: How pathogens turn a plant defense guardian into an accomplice」で重要論文として紹介されました。