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第170回BRCセミナーのお知らせ

体細胞クローン胚におけるヒストン修飾に関する研究

第170回BRCセミナーのお知らせ
ポスター(PDF版)

日時

2024年7月26日(金)15:00~16:00

場所

理化学研究所バイオリソース研究センター
事務棟大会議室

オンライン同時開催

Zoom Webinar利用
(参加ご希望の方はinfo-brc-seminar@ml.riken.jpまで連絡をお願いいたします。接続情報をお送りいたします。)

講師

李 翀 先生 (Dr. Chong Li)
上海市第一産婦人科病院 クリニカルトランスレーション研究センター
同済大学 (Tongji University) 生命科学と技術学部

要旨

体細胞核移植 (Somatic Cell Nuclear Transfer: SCNT) とは、終末分化した体細胞を除核した卵母細胞に移植する技術であり、再構築したクローン胚では体細胞ゲノムが全能性状態にリプログラミングされます。
しかし、これまでの研究により、クローン胚の発生には重大な欠陥が存在し、発生異常による胚発生停止、流産、胚外組織(胎盤)の障害などの望ましくない影響があります。
クローン胚発生異常の主な原因として、ドナー細胞特異的なエピゲノムが完全にリプログラミングされていないため、受精胚に比べると非常に大きなエピゲノムの差が生じることが多くの証拠で示されています。
そこで、我々はLow input in situ Hi-C法、ultra-low-input MNase-seq、ULINChIP-seq、CUT&RUN法などのハイスループットシーケンシング法を用いて、クローン胚の三次元クロマチン構造、ゲノムワイドヌクレオソームプロファイリング、ヒストンメチル化修飾を解析しました。
データ解析の結果から、クローン胚には、より強いTAD 境界、異常なスーパーエンハンサーとプロモーター相互作用、ヌクレオソームリモデリングの遅延、またZGA(胚性遺伝子活性化)期および胚盤胞期におけるH3K9me3やH3K4me3の脱メチル化と再メチル化の明らかな異常が見られました。
クローン胚の遺伝子発現レベルと合わせて解析したところ、Mcrs1というH3K9me3に関連する転写因子を見つけており、それが初期胚発生に不可欠であると考えています。
我々がMcrs1をクローン胚の2細胞期に過剰発現したところ、H3K9me3の修飾が部分的にレスキューされました。その結果、クローンマウスの出産率も顕著に高めることができました。

お問合せ

バイオリソース研究センター セミナー担当
info-brc-seminar@ml.riken.jp

当セミナーは、学生、研究者、技術者を対象としたものです。
理化学研究所以外からご参加の方は、所属する大学または研究機関が発行する身分証をご持参になり、守衛所にて入構証をお受け取りください。