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ヒトiPS細胞による若年性ネフロン癆の病態モデリング
-遺伝性腎臓病発症の仕組みの解明へ-

理化学研究所(理研)バイオリソース研究センター(BRC)iPS細胞高次特性解析開発チームの林 洋平 チームリーダー、荒井 優 大学院生リサーチ・アソシエイト(研究当時、東京理科大学 大学院薬学研究科 博士課程(研究当時))、東京理科大学 薬学部 生命創薬科学科の早田 匡芳 教授らの共同研究チームは、遺伝性腎臓病の一つである「若年性ネフロン癆(ろう)」の患者から作られたiPS細胞(誘導性多能性幹細胞)を利用して、その病態を培養皿上で再現することに成功しました。

本研究成果は、若年性ネフロン癆などの遺伝性腎臓病に関する発症機序の解明、新規治療法の開発に貢献すると期待できます。

若年性ネフロン癆は、NPHP1遺伝子の変異によって起こり、腎臓に嚢胞(のうほう)(中に液体などを含む袋状の構造体)が多数形成されることで腎機能が低下し、やがて末期腎不全へと至る疾患です。しかし、その進行を止める根本的治療薬はなく、どのように腎嚢胞が形成されるのか、など不明な点が多く残されています。

今回、共同研究チームは、若年性ネフロン癆患者から樹立したiPS細胞で、一次繊毛の形成・形態異常を見いだしました。また、患者iPS細胞から腎臓オルガノイドを作製し、浮遊旋回培養することで、培養皿上で腎嚢胞の形成を再現しました。さらに、これらの異常が実際にNPHP1遺伝子の異常に起因することをゲノム編集技術などを用いて検証しました。

本研究は、科学雑誌『Frontiers in Cell and Developmental Biology』オンライン版(6月26日付)に掲載されました。