繁殖効率を高めたラットの作り方
-50年以上実現できなかった過排卵妊娠に成功-
理化学研究所(理研)バイオリソース研究センター(BRC) 遺伝工学基盤技術室の持田慶司特別嘱託技師、小倉淳郎室長、京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設の守田昂太郎特定助教、浅野雅秀施設長・教授らの共同研究グループは、抗インヒビンモノクローナル抗体を投与して、ラットの産子数を1.4倍以上に増加させることに成功しました。
本研究成果は、バイオリソースとして貴重なラット各系統の繁殖効率の改善や新規疾患モデルラットの作製などに貢献すると期待できます。
今回、共同研究グループは、抗インヒビンモノクローナル抗体を4系統のラットに投与したところ、繁殖効率(妊娠率×産子数)が1.4~2.7倍に増加することを発見しました。これまでにマウスへ本抗体を投与すると複数の系統で産子数が1.4倍に増加することを報告しており、マウスに続いてラットでも同様な効果が認められました。これまで50年以上も前から、排卵数を増やして子供の数を増やす研究が進められたものの、実現できませんでした。この抗体の投与により妊娠率が向上し、健康的な多くの産子が得られて、その次の世代まで正常に繁殖が進むことを確認しています。この方法を利用すれば、繁殖が困難な場合や、ラットが高齢の場合でも効率的な産子作出が可能と考えられ、さらに今後はマウスやラット以外の動物種、希少動物などへの応用が期待されます。
本研究は、科学雑誌『Scientific Report』オンライン版(4月26日付:日本時間4月26日)に掲載されました。