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国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟でマウス凍結胚を解凍し、無重力で胚を発生させることに成功
-哺乳類の初期発生における重力の影響が明らかに-

山梨大学発生工学研究センターの若山清香助教、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、日本宇宙フォーラム、理化学研究所(理研)バイオリソース研究センター(BRC)、明治大学農学部などからなる研究グループは、凍結したマウス2細胞期胚を国際宇宙ステーション(ISS)へ打ち上げ、宇宙飛行士が微小重力下で胚を解凍し、重力が無い宇宙でも哺乳類の胚が正常に発生し分化出来るのか調べました。マウスの胚の大きさは0.08mmしかなく、解凍や培養には高度な技術が必要です。そこで本研究では最初に、ISS内で容易に胚操作出来るデバイスを開発することで、宇宙飛行士による胚の宇宙実験を可能にしました。また、受精卵の凍結保存には-196℃の液体窒素が必要ですが、ISS では液体窒素を使うことが出来ないため、BRCの遺伝工学基盤技術室の小倉淳郎室長、持田慶司専任技師、長谷川歩未テクニカルスタッフIIが開発した-80℃で受精卵を凍結保存する方法が採用されました。これらの手法によりISSで解凍された胚は、微小重力および人工1G区に分け4日間宇宙で培養されました。ほぼ同時に筑波宇宙センターで地上1G実験を実施しました。その結果、マウス2細胞期胚は微小重力でも胚盤胞期まで発生でき、胎児側と胎盤側の細胞へ正しく分化出来ることが明らかとなりましたが、一部の胚は胎児側の細胞が2か所に分かれており、一卵性双生児が産まれる可能性も示されました。

本研究成果は、科学雑誌『iScience』オンライン版(10月28日付)に掲載されました。