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患者由来iPS細胞の肝臓難病モデル
-ウィルソン病の治療薬候補を探索-

理化学研究所(理研)バイオリソース研究センターiPS細胞高次特性解析開発チームの林洋平チームリーダー(筑波大学医学医療系教授(連携大学院))、宋丹研修生(筑波大学大学院人間総合科学研究科博士課程)(研究当時)、東京都医学総合研究所再生医療プロジェクトの宮岡佑一郎プロジェクトリーダー(東京医科歯科大学大学院連携准教授、お茶の水女子大学大学院客員准教授)、高橋剛研究員、筑波大学医学医療系の小田竜也教授、鄭允文准教授(研究当時)らの共同研究グループは、肝臓難病であるウィルソン病の患者から樹立したiPS細胞を肝臓の細胞に分化させ、その病態を培養皿中で再現することに成功しました。

ウィルソン病はATP7B遺伝子の変異によって起こり、体内に不要な銅が蓄積するために、肝臓や脳などを中心に全身性の障害が生じる疾患です。本研究成果は、ウィルソン病や肝機能障害の新たな治療法開発につながると期待できます。

今回、共同研究グループは、患者から樹立したiPS細胞を肝細胞に分化させることで、ウィルソン病の病態を培養皿中で再現しました。さらに、ゲノム編集を用いて、ATP7B遺伝子の変異を正常な配列へと修正したり、逆にATP7B遺伝子を変異させたりすることで、ATP7B遺伝子の詳細な機能解析を可能にしました。これらのiPS細胞に由来する肝細胞において、レチノイドいう物質がウィルソン病の症状を抑制することも見いだしました。

本研究は、科学雑誌『Human Molecular Genetics』オンライン版(9月21日付:日本時間9月21日)に掲載されました。