アルツハイマー病病因分子の産生量に影響を与える土壌微生物叢由来代謝物の同定
-土壌微生物叢 vs アミロイドβから新世代の微生物創薬へ-
近藤孝之特定拠点講師(京都大学iPS細胞研究所(CiRA)増殖分化機構研究部門特定拠点講師、理化学研究所(理研)バイオリソース研究センター(BRC)iPS創薬基盤開発チーム客員研究員、理研革新知能統合研究センター(AIP)iPS細胞連携医学的リスク回避チーム客員研究員)、井上治久教授(CiRA同部門教授、BRC同チームチームリーダー、理研AIP同チーム客員主管研究員)、日本マイクロバイオファーマ株式会社らの研究チームは、日本の土壌に由来する微生物叢から抽出・精製した代謝物ライブラリと、アルツハイマー病(AD)患者さん由来のiPS細胞から調製した大脳皮質神経細胞を用いて、土壌微生物叢の代謝物がADの中心的な病因分子の一つであるアミロイドβ(Aβ)の産生動態に与える影響を評価し、Aβ産生動態を変化させる代謝物として、ミロテキウム属の真菌が産生するベルカリンAと、ストレプトマイセス属の細菌が産生するMer-A2026Aを同定しました。このように、微生物由来の代謝物ライブラリとiPS細胞技術を組み合わせることで、従来直接的に評価することが困難だった微生物叢と脳神経系の関連性を検証し、将来的なADのリスク因子探索や新たな微生物創薬につなげることができます。
本研究成果は2022年3月2日午後7時(日本時間)に英国科学雑誌『Scientific Reports』でオンライン公開されました。