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上下動撹拌培養装置を用いた流体制御により誘導した反転型脳オルガノイド
-脳オルガノイド誘導の流体シミュレーションと流体力学的理解-

Dang Ngoc Anh Suong 元研究員(CiRA増殖分化機構研究部門・理化学研究所(理研)バイオリソース研究センター(BRC)iPS創薬基盤開発チーム)、今村恵子特定拠点講師(CiRA同部門・理研革新知能統合研究センター(AIP)iPS細胞連携医学的リスク回避チーム(上田修功チームリーダー)客員研究員)、井上治久教授(CiRA同部門・理研BRC iPS創薬基盤開発チームチームリーダー、理研AIP iPS細胞連携医学的リスク回避チーム客員主管研究員)らの研究グループは、上下動撹拌型の培養装置を用いて、非定常的に3D浮遊培養を行いながら流体制御することによって、従来の化合物を使用せずに脳オルガノイドを誘導できることを明らかにしました。

近年、オルガノイド研究は注目されており、脳オルガノイドをつくる方法がこれまでに報告されてきました。井上教授らのグループは、培養液の流動作用・撹拌方法に着目し、上下に非定常撹拌注3)する装置を用いて脳オルガノイドを誘導しました。すると、従来の化合物を使用せずに脳オルガノイドができ、その構造は通常の脳オルガノイドの層構造とは逆転した構造を示していました。流体シミュレーションによると、上下に非定常で撹拌するとオルガノイドが均一に分散し、細胞に均等な力がかかっていることが分かりました。また、細胞への機械的刺激を受け取るセンサーである一次繊毛を脳オルガノイドの中の神経幹細胞で調べると、上下動撹拌培養では均等に全方向に伸びており、遺伝子発現解析において一次繊毛と関連するシグナル変化が見られました。また、従来の脳オルガノイドの誘導法では見られない期間でGABA作動性神経細胞注4)の誘導ができていました。これらの結果は、流体力学的に細胞に加わる物理的作用を制御することで、脳オルガノイドへの分化を制御できることを示唆していると考えられます。

この研究成果は2021年10月22日に「Communications Biology」で公開されました。