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RNAウイルスの感染を阻害する既存薬の同定
-複数の異なるRNAウイルスに対して宿主細胞の感受性を下げることにより感染を抑制する薬剤-

今村恵子(理化学研究所バイオリソース研究センター(BRC)iPS創薬基盤開発チーム 客員研究員、京都大学CiRA増殖分化機構研究部門特定拠点講師)、櫻井康晃(長崎大学熱帯医学研究所/感染症共同研究拠点(兼任)助教)、川口実太郎(株式会社IDファーマ 営業推進室長)、安田二朗(長崎大学感染症共同研究拠点/熱帯医学研究所(兼任)教授)、井上治久(京都大学CiRA増殖分化機構研究部門教授、理化学研究所BRC iPS創薬基盤開発チームチームリーダー)らの研究グループは、ヒトiPS細胞とRNAウイルスの一種であるセンダイウイルスを用いて感染症モデルを構築し、抗RNAウイルス活性を呈する既存薬のスクリーニングを行いました。選抜されたヒット化合物について、Huh7細胞におけるエボラウイルス、Vero E6細胞における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抗ウイルス効果を評価しました。

Raloxifeneを含む選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)は、エボラウイルスとSARS-CoV-2に対して抗ウイルス作用を示しました。また、PPARγアゴニストであるPioglitazoneもSARS-CoV-2に対して抗ウイルス作用を示し、RaloxifeneとPioglitazoneは、Vero E6細胞において相乗的な抗ウイルス作用を示すことが分かりました。さらに、SERMがSARS-CoV-2の宿主細胞への侵入ステップを阻害することを明らかにしました。以上から、これらの既存薬はRNAウイルスに対する宿主細胞の感受性を調節し、抗ウイルス作用を示すことが明らかとなりました。

この研究成果は2021年4月7日(日本時間)欧州科学誌「FEBS Open Bio」でオンライン公開されました。